真社会性。
真社会性(eusociality)とは、繁殖する個体が集団の一部に限られ、残りが繁殖せずに子の世話や採餌などの労働を担い、しかも世代が重なって一緒に暮らす社会のあり方。ハチ・アリ・シロアリで広く知られ、哺乳類では報告例がごく少数です。
ふつう、動物の集団は「全員が自分の子を残そうとする個体の集まり」として理解できます。真社会性の集団はそうなっていません。労働を担う個体は、自分では子を残さないまま一生を終えることがあります。自然選択の説明としては一見不利に見えるため、なぜ成り立つのかが長く議論されてきました。
三つの条件
一般に、次の三つがそろったときに真社会性と呼ばれます。第一に、繁殖の分業があること(産む個体と産まない個体に分かれる)。第二に、子の世話を共同で行うこと。第三に、親の世代と子の世代が同じ集団の中で重なって暮らすこと。単に群れているだけ、共同で子育てするだけでは、この呼び方はしません。
哺乳類での例
哺乳類での代表例がハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)で、一つのコロニーで繁殖するのは女王一匹に限られます。近縁のデバネズミ類(Fukomys属など)にも、繁殖の偏りが強い種が知られています。ただし「繁殖しない個体」が生理的に不妊なのか、条件が変われば繁殖できるのかは種によって異なり、女王が失われると別の個体が繁殖を始める例が報告されています。
読むときの注意
昆虫の真社会性で働く仕組み(フェロモンによる調節など)を、そのまま哺乳類に当てはめて読まないことが大切です。似た社会の形にたどり着いていても、それを支える仕組みが同じである保証はありません。逆に、系統の遠い動物が似た仕組みを使っていることが分かれば、それ自体が一つの発見になります。