バクテリオファージ。
バクテリオファージ(bacteriophage)とは、細菌に感染して増殖するウイルス。頭部の殻にゲノムを詰め、尾で宿主に取りつく形のものが多い。
単に「ファージ」とも呼ばれます。名前は「細菌を食べるもの」に由来し、20世紀初頭に独立して二度発見されました。地球上でもっとも数の多い生物学的存在とみなされており、海水1ミリリットルに数千万個の粒子が含まれるという推定もあります。
体のつくり
研究でよく扱われるのは、多面体の頭部と尾を持つ「有尾ファージ」です。頭部の殻(カプシド)は主要カプシドタンパク質が多数集まってできており、そこにゲノムDNAが高密度で収められています。頭部と尾のつなぎ目にはポータルと呼ばれる門があり、DNAの出し入れを担います。尾は宿主に取りつき、ゲノムを注入する通路になります。尾の長さを決める「テープメジャータンパク質」のように、役割が名前になっている部品もあります。
細菌との攻防
ファージに感染された細菌はしばしば死ぬため、細菌の側にも多様な防御機構が進化しました。侵入したDNAの配列を記録して切るCRISPR-Casのほか、ファージのタンパク質の「かたち」を検知して応答するセンサー群も知られています。ファージ側もこれを回避する仕組みを持ち、両者の応酬が微生物の進化の大きな駆動力になっていると考えられています。抗菌薬が効きにくい細菌への対抗手段としてファージを使う「ファージ療法」も研究されていますが、適用範囲や安全性の評価は分野ごとに議論が続いています。
補足:分類上、かつての「有尾ファージ目(Caudovirales)」は再編が進み、現在は複数の科・目に分けて扱われる。文献の年代によって呼び名が異なる点に注意。