用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

クライオ電子顕微鏡

クライオ電子顕微鏡(cryo-electron microscopy, cryo-EM)とは、試料を急速凍結して電子線で撮影し、多数の画像を計算で重ね合わせて分子の立体構造を求める手法。

タンパク質のような分子は、電子線を当てると壊れてしまいます。そこで水ごと極低温で凍らせ、結晶化させずにガラス状の氷に閉じ込めたうえで、壊れない程度の弱い電子線で大量に撮影します。1枚1枚はノイズだらけですが、向きの違う何万枚もの粒子像を計算で分類・平均化することで、立体像が浮かび上がります。

結晶化しなくてよいという強み

長らく構造解析の主役だったX線結晶構造解析では、まず対象を結晶にする必要がありました。結晶にならない分子や、複数の部品が集まった大きな複合体は、そこで手詰まりになります。クライオ電子顕微鏡は結晶化を必要としないため、膜タンパク質や巨大な複合体の構造を得やすく、2010年代の検出器と解析ソフトの進歩を経て解像度が大きく向上しました。この分野の基盤を築いた研究者には2017年のノーベル化学賞が贈られています。

読むときの注意

得られるのは、凍結した瞬間の姿の平均です。同じ試料から複数の状態を分類して取り出せる場合もあり、結合前後のスナップショットを並べて反応の道筋を推定する使い方が広がっています。ただし、それはあくまで静止画の並びであり、細胞内で実際にその順序と速さで進む保証にはなりません。解像度も部位によって異なるため、論文では領域ごとの確からしさを確認するのが妥当な読み方です。

補足:分解能はオングストローム(0.1ナノメートル)単位で示される。数値が小さいほど細かく見えており、側鎖の向きまで議論できるかどうかの目安になる。