用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

身体マップ

身体マップ(bodily map)とは、人体の輪郭図を参加者自身に塗り分けてもらい、感覚や感情が体のどこで生じるかをピクセル単位で集計する手法のこと。

塗り絵を統計にかける

手順は素朴です。正面と背面の人体シルエットを見せ、「その感覚を強く感じる場所を塗ってください」と頼む。強く感じる場所は重ねて塗ってもらい、色の濃さを頻度や強さの代わりに使います。集まった塗り絵をピクセルごとに重ね合わせ、有意に塗られている領域を統計的に取り出す——ここまで進めると、主観的な報告が全身の地図という形の量になります。感情の身体マップを扱った2014年の研究と、社会的接触を扱った2015年の研究で確立された道具立てです。

強みと弱み

強みは、実験室で刺激を当てられない対象(感情、他人との接触、くすぐったさ)でも全身を一度に扱えることと、同一人物から複数の地図を取れば地図同士を比べられることです。弱みは、あくまで自己申告である点にあります。この弱みへの対処として、触覚や痛みの地図を先に描かせ、物理的な刺激を使った過去の心理物理実験の結果と一致するかを確かめる、という検算がしばしば行われます。

読むときの注意

身体マップは「その場所に受容器がどれだけあるか」の地図ではありません。体験がどこで生じると報告されたかの地図です。神経の分布や皮膚の厚さといった解剖の実測値と突き合わせて初めて、両者が一致するのかどうかが分かります。2026年のくすぐったさの報告では、この突き合わせによって「触覚線維が密な場所ほどくすぐったい」という予測が支持されませんでした。再現性を見るときは、集計の手続き(多重比較の補正、参加者数、文化や年齢の偏り)まで確かめるのが確実です。

補足:ピクセル単位の地図は多重比較の問題が大きくなるため、偽発見率(FDR)による補正が使われることが多い。