用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

ディック効果

ディック効果(Dick effect)とは、原子時計が飛び飛びに測ることで、測っていない時間に起きたレーザーの速い揺らぎが、あたかも遅い揺らぎのように誤って現れる現象。時計の安定度を制限する要因のひとつとされています。この「測っていない時間」をデッドタイム、それをなくした動作をゼロデッドタイム動作と呼びます。

時計の中では、レーザーが「とりあえずの振り子」の役目を担います。原子はそのレーザーの周波数が正しいかどうかを判定する物差しで、判定の結果でレーザーを引き戻す——という補正が繰り返されています。

飛び飛びに見ると、速い動きを見誤る

ところが原子側は、いつでも判定できるわけではありません。光格子時計では、原子を冷やし、状態を整え、レーザーを当てて励起し、その結果を検出する、という手順を順番に繰り返します。判定しているのは励起の区間だけで、それ以外はレーザーが見張られていない状態です。

飛び飛びの標本から元の動きを復元しようとすると、標本の間隔より速い変化は、間隔より遅い偽の変化として現れます。動画のコマ数が足りないと、速く回る扇風機の羽根がゆっくり逆回りに見えるのと同じ理屈です。この折り返しが時計の読みに混ざり込むのがディック効果です。

削られるのは安定度

この効果が主に悪くするのは安定度で、時計の正確さとは別の量です。安定度が低いと、目標の桁に届くまで長い時間の平均が必要になります。レーザー自体の雑音を下げれば影響は小さくなりますが、そのためには大がかりな安定化装置が要ります。持ち運べる装置で現場を測りたい場面では、この装置の大きさがそのまま制約になります。

なくす方法は一つではない

デッドタイムをなくす道は複数あります。2つの原子集団を用意して交互に受け持たせる方法(片方が測るあいだに片方が準備する)と、冷やした原子を絶えず供給し続けて、準備・励起・検出を場所で分ける方法です。前者は既存の構成を大きく変えずに済み、後者はレーザーの安定化装置への依存を減らせる可能性があるとされています。

関連記事:いちばん正確な時計には、時を測っていない時間があります。それを埋める新しい方法は、原子を止めずに流し続けるものでした。