用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

光格子時計

光格子時計(optical lattice clock)とは、レーザー光の干渉で作った格子状の入れ物に、レーザー冷却で冷やした多数の原子を並べて閉じ込め、その原子が光を吸う周波数を基準に時を測る時計。原子1個ずつではなく多数を同時に測れるので、短い時間でも数字が落ち着きやすいという利点があります。

時計は「同じ速さで繰り返すもの」を数える装置です。振り子でも水晶でもよいのですが、繰り返しの速さが揺らげば、数えた結果もずれます。原子の共鳴周波数は、同じ種類の原子であればどこで測っても同じ——という前提が使えるため、基準として選ばれてきました。

マイクロ波から光へ

現在の「秒」の定義はセシウム原子のマイクロ波領域の遷移で決められています。いっぽう可視光の領域の遷移を使うと、1秒間に刻む回数がおよそ5桁多くなります。刻みが細かいぶん、同じ時間で測っても細かく読めます。光の領域の遷移を使う時計は、いまセシウム基準より2桁ほど小さい不確かさで基準周波数を作れるところまで報告されています。

格子に並べる理由

原子を宙に浮かせておかないと、壁や重力の影響が入ります。そこでレーザーの立体的な干渉縞を「卵のパック」のように使い、各くぼみに原子を1個ずつ抱えさせます。閉じ込めが十分に強いと、原子の運動範囲が光の波長よりずっと小さくなり、動きに伴う周波数のずれ(ドップラー効果)が抑えられます。この状態をラム・ディッケ束縛と呼びます。閉じ込めに使う光そのものが原子のエネルギーをずらしてしまう問題は、そのずれが打ち消される特別な波長(魔法波長)を選ぶ設計で扱われます。

正確さと安定度は別の話

時計の性能は2つに分けて語られます。真の周波数からどれだけずれているかが正確さ、同じ測定を繰り返したときのばらつきがどれだけ速く小さくなるかが安定度です。光格子時計では正確さの数字が先に進んだため、いまは安定度をどう詰めるかが論点になっています。測定していない空白の時間(デッドタイム)を減らす研究は、この安定度の側の話です。

関連記事:いちばん正確な時計には、時を測っていない時間があります。それを埋める新しい方法は、原子を止めずに流し続けるものでした。