中性子寿命問題。
中性子寿命問題(neutron lifetime puzzle)とは、自由な中性子の平均寿命が、測定方式によって約10秒食い違う未解決問題。容器に閉じ込めて生き残った数を数える「貯蔵法」と、飛行中の中性子から出る崩壊生成物を数える「ビーム法」で値が合いません。原因は未知の系統誤差か、それとも標準理論の外側にある新しい物理か、決着していません。
報告されている代表値は、貯蔵法が877.75 ± 0.28(統計)秒(UCNτ、2021年・査読済み)、ビーム法が887.7 ± 1.2(統計) ± 1.9(系統)秒(NIST、2013年・査読済み)です。誤差の大きさに比して差は大きく、4.4σ相当の食い違いとして整理されています。
方式の違いが手がかりになる
貯蔵法は「残った数」を数えるので、崩壊以外の理由で中性子が失われると寿命が短く見えます。ビーム法は「崩壊した証拠」を数えるので、その影響を受けません。この非対称性から、中性子が別の状態へ抜け出しているという説明が繰り返し提案されてきました。
提案されてきた説明のひとつは狭まった
候補の一つがミラー物質への振動です。しかし超冷中性子約250億個を用いたPSIの探索では、走査した磁場領域で証拠は見られなかったと報告されました(Physical Review Letters 137, 051802、2026年7月28日発表・査読済み)。寿命問題そのものは未解決のまま残っています。