ミラー物質。
ミラー物質(mirror matter)とは、既知の素粒子それぞれに鏡像のような相棒が存在するという仮説上の物質。ミラー電子、ミラー陽子、ミラー中性子が想定されます。私たちの物質とはほとんど関わらず、基本的には重力を通じて互いの存在を感じ取る程度だと考えられています。理論物理の分野で数十年にわたり議論されてきた考え方です。
関わりが弱いことは、探すうえでは厄介ですが、仮説としての魅力にもなります。宇宙の質量の大半を占めながら正体が分からない暗黒物質は「ほとんど関わらないのに重い」存在なので、条件が合うのです。実際にミラー物質は暗黒物質の候補の一つとして扱われてきました。
接点は二つしかない
ミラー物質が通常の物質と関わる道筋は、重力と、まれに起こるかもしれない中性の粒子の振動(入れ替わり)の二つに限られるとされます。重力だけでは存在を証明できないため、実験は後者を狙います。電気を帯びていない中性子が候補として選ばれるのはこのためです。
2026年の探索では証拠が出なかった
スイスのポール・シェラー研究所(PSI)は、超冷中性子およそ250億個を用いて中性子からミラー中性子への振動を探索し、磁場を走査した領域では証拠が見られなかったと報告しました(Physical Review Letters 137, 051802、2026年7月28日発表・査読済み)。仮説の全否定ではありませんが、有力視されていた領域が狭まったことになります。