用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)

ポリヒドロキシアルカン酸(polyhydroxyalkanoate, PHA)とは、細菌や古細菌が、余った炭素とエネルギーを蓄えるために細胞の中で合成する高分子のこと。微生物にとっては貯蔵物質であり、取り出して成形すると生分解性プラスチックになる。

人間が使う言葉としてのPHAは「生分解性プラスチック」ですが、順番は逆です。微生物のほうが先に作っていて、それを人が見つけて素材にしました。炭素が余っているときに細胞内で合成し、足りなくなったら取り崩す。動物が脂肪を蓄えるのと似た役割の物質です。

作り方と使い道

工業的には、発酵タンクで細菌を育て、糖・デンプン・植物油といった炭素の多い基質を与えます。条件が合うと細菌が体内にPHAを溜め込むので、それを抽出して樹脂状に加工します。成形でき、水にある程度強く、日常の用途に耐える程度には安定しているため、食品包装や衛生用品に使われます。農業では肥料をPHAの粒に包んで少しずつ出させる用途、医療では創傷被覆材や薬剤の運搬、体内で分解される縫合糸や埋め込み材にも使われています。

読むときの注意

PHAは自然界の土壌・堆積物・水中にもともと存在します。そのため「PHAが分解される」という話題は、石油由来のプラスチック(ペットボトルやレジ袋の素材)が分解されるという話題とは別のものです。混ぜて読むと、海洋プラスチック問題が解決に近づいたかのように誤読しやすくなります。また、生分解性という表記は「どんな条件でも必ず消える」という意味ではなく、分解の速さは温度・酸素・微生物の顔ぶれによって変わります。

補足:バイオプラスチック市場に占めるPHAの割合は現時点では小さいとされる。生分解性・バイオ由来の素材への需要が伸びるにつれて生産能力は拡大する見通しが示されている(マックス・プランク協会の解説より)。