用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

正の自然選択

正の自然選択(positive selection)とは、ある遺伝的変異をもつ個体が生存や繁殖で有利だったために、その変異が集団のなかで頻度を上げていく過程。

有利な変異が広がるとき、その変異の周辺にあった配列も一緒に運ばれます。結果として、その領域では多様性が低く、長い同じ並び(ハプロタイプ)が集団の多くに共有される、という偏りが残ります。ゲノムを走査してこの偏りを探す解析が選択スキャンで、rXP-nSL・iHS・FST などいくつもの指標が使われます。指標が違えば、拾いやすい時期や強さも違います。

閾値は境界ではない

選択スキャンの結果は、ふつう「ゲノム全体の分布のうち上位◯%」という形で線を引いて示されます。この線は、その解析のなかで相対的に目立つ領域を選び出すための便宜で、選択があったかなかったかを分ける境界ではありません。上位に入らなかった領域に選択が働いていなかったとも、入った領域すべてに働いていたとも言えません。

選択でなくても、選択に似る

やっかいなのは、集団の側の事情が似た信号を作ることです。人口が急に減る、いくつかの集団に分断される、少数の個体から広がり直す。こうした出来事は、特定の変異の頻度を偶然だけで大きく動かします。古代ゲノムの研究では、氷期に集団の規模が落ちたと推定されるケースが多く、この切り分けが常に課題として残ります。

補足:ある領域が現代の集団で何の形質と関連づけられているかは、過去の集団でも同じ働きをしていた証拠にはならない。関連の情報は解釈の手がかりであって、当時の生理を測った値ではない。