用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

古代DNA

古代DNA(ancient DNA)とは、遺骨・歯・ミイラ化した組織・堆積物などに残された、時間の経過で断片化し損傷したDNA。

生物が死ぬと、DNAは酵素や水、紫外線によって少しずつ切れていきます。数百年から数万年を経た試料から取り出せるのは、多くの場合100塩基に満たない短い断片で、量もごくわずかです。低温で乾燥した環境ほど残りやすく、砂漠や永久凍土、洞窟の堆積物から良好な試料が得られることが知られています。

難しさ

問題は量の少なさだけではありません。試料の中では、目当ての生物のDNAより土壌の微生物などのDNAのほうがはるかに多いのが普通で、その中から拾い出す必要があります。さらに、発掘者や実験者に由来する現代のDNAが混じり込む汚染のリスクが常にあり、専用のクリーンルームと厳密な手順が求められます。もっとも、損傷そのものが手がかりにもなります。古いDNAには断片の末端でシトシンがチミンに置き換わる特有のパターンが蓄積するため、そのパターンの有無が「本当に古いDNAか」を判定する材料になります。

読み取れること

ヒトの集団の移動や混血の歴史のほか、その人に感染していた病原体のゲノムも同じ試料から回収できる場合があります。ヒトを読む目的で取った配列データを、あとから病原体の署名で走査し直すことで、当初の計画になかった発見に至る例も報告されています。ただし読めるのは「そこに存在した」ことまでで、死因や症状の重さといった臨床的な事実は、配列だけからは決まりません。

補足:得られる情報は試料の保存状態に強く依存する。1個体・1遺跡の結果を、その時代や地域の全体像として一般化しないことが基本。