量子もつれ。
量子もつれ(quantum entanglement)とは、複数の粒子が、それぞれ個別には状態が決まらず、全体として一つにまとまった量子的な状態にある現象のこと。片方の粒子の状態を調べると、離れていてももう片方の状態が瞬時に定まって見える、量子力学に特有のつながりです。
量子もつれは、量子コンピュータや量子暗号といった量子技術の土台になる資源として知られています。実験室で意図的に作る場合は、原子・イオン・光子などを数個から数十個の規模で外部から丁寧に隔離するのが一般的なやり方です。粒子の数が増え、系が大きくなるほど、周囲との相互作用でもつれが壊れやすくなるため、目に見える大きさの物質でこれを直接確かめるのは長らく難しいとされてきました。
「量子フィッシャー情報量」という物差し
近年は、粒子の集まりが外部からの刺激にどれだけ敏感に反応するかを測る「量子フィッシャー情報量」という指標を使うことで、もつれの存在を間接的に推定する方法が使われ始めています。粒子どうしがばらばらに振る舞う場合には反応の大きさに上限がありますが、もつれ合っている場合はその上限を超えた反応が起こりうるためです。この方法により、センチメートル単位の固体の中に、多数の粒子がまとまって関わり合う量子的な単位が存在する証拠が報告された例があります。
読むときの注意
このような手法で分かるのは、あくまで「少なくとも何個の粒子が集団として関わっているか」という下限の見積もりです。「物質全体が一つの巨大な量子状態にある」という意味ではなく、内部の一部が小さな集団単位でもつれ合って応答している、という限定的な証拠である点には注意が必要です。