地球を見張るために作られた鏡が、今夜、宇宙を見る目になります。
要点:NASAの新しい宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」が、日本時間2026年8月30日20時26分ごろ、スペースXの「ファルコンヘビー」ロケットで打ち上げられる予定です(この記事を書いている時点では、まだ打ち上げ前)。主鏡の直径はハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4メートルですが、一度に写せる範囲は面積でおよそ100倍。中身は、かつて偵察衛星として作られながら一度も宇宙へ出ないまま倉庫に眠っていた鏡です。
望遠鏡には、二つの見方があります。地上から星を見上げる見方と、軌道の上から地上を見下ろす見方です。その両方をこれから背負うのが、NASAの「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」です。
打ち上げは日本時間2026年8月30日20時26分ごろ(アメリカ東部夏時間の同日午前7時26分/協定世界時11時26分)、フロリダ州のケネディ宇宙センター第39A発射施設から、スペースXの「ファルコンヘビー」ロケットで実施される予定です。NASAは8月28日付で打ち上げ準備完了審査(LRR)の完了を発表し、機体・ロケット・支援チームの準備が整ったとしています。天候条件を満たす確率は、現地時間28日時点で60%と予測されていました。もともとの計画では2027年5月の打ち上げが目標でしたが、開発が計画どおりに進んだため、それより早い時期での実施になっています。
見張るために作られ、一度も飛ばなかった鏡
ローマン宇宙望遠鏡の主鏡には、望遠鏡として生まれたわけではないという来歴があります。アメリカの偵察機関NRO(国家偵察局)は1999年、「フューチャー・イメージリー・アーキテクチャ」という計画のもとボーイング社に新型の偵察衛星の開発を委託し、2001年の同時多発テロ以降はその開発を加速させました。ところが費用の超過が重なり、この計画は2005年に打ち切られています。当時のニューヨーク・タイムズ紙は、この計画をアメリカの偵察衛星開発50年の歴史のなかでも「もっとも劇的で高くついた失敗」と評したと報じられています。
打ち切られた計画には、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4メートル径の鏡を持つ、未使用の望遠鏡一式が2基残っていました。NROは2012年、この2基をNASAへ無償で譲渡します。鏡1台の価値は少なくとも2億5,000万ドルと見積もられていたと報じられました。渡された資料の一部は黒塗りだったとも伝えられています。NASAはこの鏡に新しい電子機器と赤外線カメラを組み込み、地球を見張るために作られた目を、宇宙を見る目に作り替えました。もう1基は今もNASAの手元にあり、何に使うかはまだ決まっていません。
面積で100倍、一辺に直すと10倍
主鏡の大きさはハッブル宇宙望遠鏡とまったく同じ、直径2.4メートルです。違うのは、その奥にある広視野観測装置(WFI)。288メガピクセルの近赤外線カメラで、一度に写せる範囲は0.8度×0.4度です。NASAの解説では、これは満月の見かけの幅(およそ0.5度)より少し広い範囲にあたるとされています。いっぽうハッブルの主力カメラ(ACS)の視野は0.056度×0.056度で、センサーも16メガピクセルにとどまります。
面積で比べると、ローマンの視野はハッブルのおよそ100倍。100倍と聞くと途方もない数字に見えますが、面積は一辺の2乗で増えるので、一辺の長さでいえば10倍です。ハッブルが同じ範囲を撮ろうとすると、およそ100回にわけてカメラを向け直す必要がある計算になります。NASAは、ローマンが生涯でおよそ10億個の銀河の光を測る可能性があるとしています。近赤外線での感度と解像度(1画素あたり0.1秒角)はハッブル並みに保ちながら、視野だけを広くした「望遠レンズではなく広角レンズ」という位置づけです。
一つの望遠鏡が、これまでの記録を追い抜こうとしている
NASAのローマン科学センター(IPAC)による打ち上げ前の予測では、恒星の前を惑星が横切る「トランジット法」だけで、およそ10万個の太陽系外惑星が見つかると見積もられています。さらに、遠くの星の光が手前の天体の重力でゆがむ現象を利用する「重力マイクロレンズ法」では、これまでの方法では見つけにくかったタイプの惑星がおよそ1,000個、新たに加わる見込みです。
これは、あくまで打ち上げ前のシミュレーションにもとづく予測であって、確定した結果ではありません。それでも数字だけ並べてみると、2026年時点でNASAの系外惑星カタログに登録されている確認済みの太陽系外惑星はおよそ6,000個あまりです。人類がこれまで見つけてきた数の10倍以上を、望遠鏡1台が見つけようとしていることになります。
届くまでの慎重さ
打ち上げが成功しても、すぐに星が見えるわけではありません。報道によれば、ローマンは打ち上げからおよそ30日かけて、太陽と反対側、地球からおよそ150万キロ先にある「ラグランジュ点2(L2)」という定位置まで移動します。そこから機器の較正や鏡の調整といった試運転の期間が続き、科学観測が始まるまでにはさらに時間がかかる見通しです。
開発費については、NASAが2020年3月に承認した際の上限が、コロナグラフの搭載と5年間の運用費を含めて39億3,400万ドル。打ち上げの契約は2022年に別途結ばれ、契約額はおよそ2億5,500万ドルとされています。同じく2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、開発の遅れと予算超過で最終的に100億ドル規模まで膨らんだのとくらべると、ローマンはここまでおおむね計画どおりに進んできた望遠鏡だと報じられています。
望遠鏡の名は、NASA初代の主任天文学者で「ハッブルの母」とも呼ばれるナンシー・グレース・ローマン氏にちなみます。機体には、公募キャンペーン「Send Your Name with Nancy Roman」を通じて世界中から集まった135万144人分の名前を記録したSDカードが、記念プレートとともに載せられているといいます。
地球を見張るために作られ、一度も飛ぶことのなかった鏡が、今夜、逆方向を向いて宇宙へ飛び立とうとしています。実際に打ち上げがどうなったか、そしてこの鏡が最初に何を見るのかは、これからの観測が教えてくれます。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.30
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。