用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

引用バイアス

引用バイアス(citation bias)とは、都合の良い結果を示した研究ばかりが繰り返し引かれ、分野全体の証拠が実際より強く見えてしまう偏り。

論文の書き手は、先行研究をすべて等しく引くわけではありません。効果あり・仮説に沿う・話がきれいに通る、そうした結果のほうが引かれやすく、否定的な結果や「変わらなかった」という報告は引かれにくい。この差が何十年も積み上がると、元の証拠はばらついていたのに、後年の教科書や総説では確立した知識のように読めてしまいます。

出版バイアスとの違い

否定的な結果がそもそも公表されにくいのが出版バイアスで、公表されたあとの引かれ方が偏るのが引用バイアスです。二つは重なって働くため、メタアナリシスでは両方を疑ってかかる必要があります。

ゆがみの伝わり方

引用のたびに主張が少しずつ強くなる現象も報告されています。2023年のNature Ecology & Evolutionの論説は、共通菌根ネットワークの分野で、2022年に出た論文が元の野外研究について述べた記述のうち正確とみなせるものは半分に届かなかったと報告しました。査読を通った論文の内側でも起こりうる、という点が重要です。

読み手の対策:孫引きの主張に出会ったら、引用元をたどって「元の論文が実際に何を測ったか」まで戻る。DOIをたどれば原典に到達できる。