用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

交差分子線

交差分子線(crossed molecular beams)とは、細く絞った二本の分子・原子のビームを真空中で直交させ、1回だけの衝突を起こさせて反応を観測する手法。衝突エネルギーを揃えられ、飛び散った生成物の角度と速度から反応の道筋を読み取れます。

フラスコの中の反応では、無数の分子が何度もぶつかり合い、途中で起きたことは平均に埋もれます。交差分子線はその逆で、衝突を1回に限る条件(単一衝突条件)を作ります。真空中で二本のビームを交差させ、交点で1回ぶつかった生成物だけが検出器へ飛んでいく。反応の一部始終を、途中経過ごと外へ取り出すための仕掛けです。

何が揃えられるのか

ビームの速度を制御すれば衝突エネルギーが決まります。さらに超音速膨張で分子を冷やせば、振動も回転もいちばん低い状態に揃えられます。反応物側の量子状態を指定できることが、この手法の要です。生成物側も量子状態ごとに分けて検出できれば、「どの状態から入って、どの状態で出たか」を一組ずつ対応づけられます。この形の測定を状態間(state-to-state)の測定と呼びます。

何が読めるのか

測るのは飛び散った生成物の角度分布と速度分布です。前方に抜けたのか後方へ跳ね返ったのかで、衝突が「かすめた」のか「正面から当たった」のかが変わります。ある角度に構造が出れば、そこに何か特別な道筋があった疑いが立ちます。ただし角度分布の模様だけでは原因を一つに絞れないため、通常は量子動力学計算と突き合わせて解釈します。

限界

単一衝突条件を作るには高真空と強い検出感度が要り、扱える系はどうしても小さな分子に偏ります。また、反応の途中にある錯体そのものを撮影しているわけではありません。読み取れるのはあくまで外へ出てきた粒子の分布であり、途中の描像は計算を介した推定になります。

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