用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

形状共鳴

形状共鳴(shape resonance)とは、回転による遠心力が作る「角運動量の壁」の内側に粒子が一時的に閉じ込められ、本当の束縛状態ではないのに短時間だけ留まる現象。ポテンシャルの形そのものが袋小路を作る点で、別の自由度にエネルギーを預けるフェッシュバッハ共鳴と区別されます。

二つの粒子が近づくとき、引き合う力だけでなく、互いのまわりを回ることで生じる遠心力も効きます。角運動量が大きいほどこの遠心力は強く、外向きに押し戻す壁として働きます。引力の谷と遠心力の壁が組み合わさると、外から来た粒子にとって「入るのは越えられるが、出るには壁が邪魔になる」窪みができることがあります。ここに嵌まるのが形状共鳴です。

束縛状態ではない、という点

窪みに入った粒子は、エネルギーだけを見れば本来そのまま外へ抜けられます。壁は有限の高さと厚みしかないので、量子力学的にはトンネルして必ず抜け出します。だから寿命が有限で、束縛状態とは呼ばず「準束縛」と表現されます。寿命の長さは壁の厚さで決まり、系によってフェムト秒からもっと長い時間まで幅があります。

フェッシュバッハ共鳴との違い

どちらも一時的な足止めですが、閉じ込め方が違います。フェッシュバッハ共鳴は、反応が進む座標とは別の自由度(振動など)にエネルギーが一時的に移ることで抜け出せなくなる型。形状共鳴は、そうした預け先を必要とせず、ポテンシャル面の形と角運動量だけで生じます。どちらが効いているかは、散乱の断面がエネルギーや角度に対してどう変わるかを見て切り分けます。

どうやって見つけるか

共鳴が効いていると、生成物の散乱角の分布に振動する模様が現れることがあります。ただしその模様だけでは干渉との区別がつかないため、量子動力学計算で準束縛状態を探し、実測とよく合うかを確かめる手続きが取られます。逆に言えば、多くの報告は錯体そのものを直接見たのではなく、痕跡と計算の一致から述べています。

関連記事:障壁を越えたあとは一直線のはずでした。散乱角の全域に残った振動が指していた場所。