用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

酵素的DNA合成

酵素的DNA合成(enzymatic DNA synthesis)とは、生きた細胞がDNAを組み立てるのに近いやり方で、水の中で酵素を使って一塩基ずつDNA鎖を伸ばす人工合成法。

診断薬・遺伝子治療・研究に使う短いDNA鎖は、人工的に「書いて(合成して)」用意します。長らく主流だったのはホスホロアミダイト法で、一度に何百万本もの配列を並行して作れる強力な方法ですが、大量の有機溶剤と集中設備を必要とします。これに対し酵素的DNA合成は、細胞内でDNAが作られる過程を模し、水を反応の場として酵素の力で鎖を伸ばします。溶剤に頼らないぶん、より穏やかで、小型・安全な「DNAを書く道具」につながりうると期待されてきました。

仕組み

DNAはレゴのように一塩基ずつ積み上げていきます。各塩基には伸びすぎを防ぐ「仮のフタ(保護基)」が付いており、次の塩基を足す前にこれを外す脱保護という工程が必要です。酵素式では、この積み上げを酵素が担い、水の中で反応が進みます。

課題

酵素式の弱点は、並行して作れる本数が伸びにくかったことです。これまでは十数本を同時に作るのが精一杯で、従来法の桁違いの並列性には及びませんでした。2026年には半導体チップ上で64本を同時合成した報告が出て、新記録とされましたが、1本の長さや密度にはなお制約が残り、実用化に向けた化学の改良が続いています。

補足:「穏やかで環境負荷が小さい」ことが酵素式の魅力。だが従来法を置き換えるには、本数・長さ・安定性をどこまで伸ばせるかが問われる。