用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

水の全分解

水の全分解(overall water splitting、OWS)とは、犠牲試薬を加えず、水だけを原料にして水素と酸素の両方を同時に発生させる反応。発生した水素と酸素の比が2対1に近いかどうかが、成立しているかの目印になります。

水を分けるとき、電子を受け取る側(水素が出る還元)と、電子を渡す側(酸素が出る酸化)は必ず対になっています。ところが実験では、片方だけを速く回すこともできます。電子を差し出す助剤や、電子を引き取る助剤を溶かしておく方法です。これらを犠牲試薬と呼びます。

半反応の試験と混ぜない

犠牲試薬を入れた系は、装置としては水素をよく出します。けれども助剤は消費されるので、燃料をつくるという目的では帳尻が合いません。半反応の試験は、材料の素性を調べるには有効ですが、そのまま実用の性能として読むことはできません。論文が全分解と書いているかどうかは、まず確かめる箇所になります。

2対1という目印

全分解であれば、水素と酸素は理屈のうえで2対1のモル比で出ます。報告値がこの比から大きく外れているときは、片側の反応が別の何かに向かっているか、生成物の一部が触媒表面で水へ戻っているかを疑います。この逆反応を抑えるために、助触媒を酸化クロムの殻で包むといった工夫が使われます。

粒子系と電極系

粉を水に分散させて光を当てる粒子系は、装置が簡素で広い面積に敷きやすい一方、水素と酸素が同じ場所で混ざります。電極を分けて電気で駆動する系では気体を別々に取り出せますが、電源と配線が要ります。どちらの方式の話なのかで、効率の指標も安全上の課題も変わります。

関連記事:光を当てるだけで水から水素をつくる粉があります。同じ粉で効率が53.4%と82.1%に分かれた理由は、外側に貼った膜の位置でした。