用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

自己マスキング

自己マスキング(self-masking)とは、自分が出している音によって、自分が聞き取りたい音が聞こえなくなること。自分の足音で周囲の物音を拾えなくなる状態と同じ現象を指す。

フクロウの静けさをめぐる、2つの説の一方

フクロウが静かに飛ぶ理由には、大きく2つの説明が立てられています。ひとつは獲物に気づかれないためというステルスの説。もうひとつが、自分の羽音で自分の耳をふさがないためという自己マスキング回避の説です。2020年の総説は、現在の証拠がわずかに自己マスキング側に傾くとしつつ、決着していないと明記しています。

フクロウの耳の性能が、この説を支える

フクロウは平均すると2〜4キロヘルツの音にもっとも敏感で、メンフクロウは止まり木から水平方向なら1度以内の精度で音源の位置を当てられると報告されています。雪の下のネズミを聞き分けて捕らえる種もいます。さらに、襲いかかったあとも獲物の音を聞き続けて飛びながら軌道を直すため、羽音が邪魔になる場面は狩りの最後まで続きます

どちらの説かを分ける実験

2つの説は、同じ対象に対して反対の予測を出す場面があります。たとえば雪の下を狩るカラフトフクロウ(Strix nebulosa)やシロフクロウ(Bubo scandiacus)では、雪が音を遮るぶん獲物に届く羽音はもともと小さいため、ステルスの説なら消音の構造は発達していないはず、自己マスキングの説ならいちばん発達しているはず、となります。背景の騒音を実験的に上げたときに狩りの成功率が下がるか上がるかも、両者を分ける方法として挙げられています。

補足:ステルス側の直接的な証拠としては、耳を聞こえなくしたカンガルーネズミが暗所でフクロウの襲撃をかわせなくなったという1962年の報告がある。関連語として前縁の櫛