副格子融解。
副格子融解(sublattice melting)とは、結晶全体の構造は保たれたまま、イオン伝導を担う一部のイオンだけが規則的な配列を失い、液体のように運動する状態。超イオン伝導を引き起こす重要な物理現象の一つと考えられています。
ふつうの融解は、結晶全体が秩序を失って液体になる現象です。副格子融解では、それが物質の一部にだけ起こります。骨格をつくる粒子(ホスト)は並んだままで、その隙間にいる粒子(キャリア)だけが並びを崩して流れはじめる。ひとつの物質の中に、固体の部分と液体のようにふるまう部分が同居する状態です。
「副格子」という言い方
結晶は、複数種類の原子やイオンがそれぞれ規則的な位置を占めて組み上がっています。その一部の種類だけを取り出した並びを副格子と呼びます。副格子融解は、この取り出した並びのひとつが秩序を失う、という指し方です。
なぜ材料研究で注目されるのか
骨格が崩れないので物質としての形は保たれ、それでいてイオンは速く動ける。全固体電池の固体電解質に求められる条件がそのまま重なるため、副格子融解がどんな条件で起きるのかは材料設計の関心事になっています。2026年7月にPNASで公開された計算研究は、キャリア間の弱い遠距離相互作用とホスト間の強い立体斥力があれば、物質の詳細に関わらずこの状態が現れると報告しました。ただし対象はモデルの中の粒子であり、実材料での検証は今後の課題とされています。