超イオン伝導体。
超イオン伝導体(superionic conductor)とは、固体でありながら、内部のイオンが液体のように高速で移動できる物質。結晶としての骨格は保たれたまま、伝導を担う一部のイオンだけが規則的な並びを離れて動き回ります。液体の電解液を使わない全固体電池の固体電解質として、実現の鍵になる材料と位置づけられています。
ふつうの固体では、原子やイオンは決まった位置で振動しているだけで、大きく移動することはありません。超イオン伝導体が変わっているのは、骨格をつくる粒子は動かないのに、隙間にいるイオンだけが液体並みの速さで流れていく点です。硫化物系・酸化物系・水素化物系など、いくつもの系統で候補材料が報告されています。
なぜ全固体電池と結びつくのか
現在広く使われるリチウムイオン電池は、イオンの通り道に液体の電解液を用います。液体は漏れや発火のリスクを抱えるうえ、電池の設計上の自由度も制約します。固体で同等の伝導が得られるなら、安全性とエネルギー密度を同時に上げる余地が生まれる、という筋書きです。ただし材料単体の伝導率が高いことと、電池として長く安定に動くことは別の課題です。
「なぜ速いのか」は物質ごとに解かれてきた
高い伝導を示す材料は見つかっているものの、その理由は結晶構造や含まれる元素に強く依存するため、共通の原理としてまとめるのが難しい領域でした。2026年7月にPNASで公開された研究は、実材料の複雑さを削ぎ落とした単純モデルの数値計算から、副格子融解を伴う高速輸送が生じる条件を絞り込んだと報告しています。