用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

触覚のフォベア

触覚のフォベア(tactile fovea)とは、体表のなかで解像度が特に高く、確かめたい対象へ意図的に向けられる一点のこと。目の網膜にある中心窩(fovea)になぞらえた呼び方。

目の中心窩との対応

ヒトの網膜では、細胞の密度が突出して高い中心窩が視野のごく一部だけを高解像度で見ています。視野の端で何かを捉えると、私たちは目を動かして中心窩をそこへ持っていく。「広く気づく仕組み」と「狭く確かめる仕組み」を分けて、後者を対象へ運ぶという設計です。触覚のフォベアは、これと同じ構造が触覚で成り立っている場合に使われる言葉です。

ホシバナモグラの11番目

ホシバナモグラ(Condylura cristata)の鼻先には22本の突起がありますが、口にもっとも近い11番目の1対は他より短く、アイマー器官の密度が高くなっています。行動の観察では、星のどこかで何かに触れたあと、モグラはその対象へ11番目を当て直してから口に入れます。大脳皮質の体性感覚野でも、11番目に割り当てられた面積は皮膚の実面積の比よりずっと大きく取られていると報告されています。

読むときの注意

「フォベア」は視覚の用語からの類推による命名であって、網膜の中心窩と発生や分子の仕組みが同じという意味ではありません。共通しているのは「解像度の高い一点を、確かめたい対象へ能動的に向ける」という機能上の設計です。似た働きは他の動物でも指摘されており、たとえばラットのヒゲの動かし方が同じ枠組みで論じられることがあります。

補足:脳の側で特定部位に不釣り合いに広い面積が割かれる現象そのものは、体性感覚野の一般的な性質として知られている(ヒトでは手と口が広い)。