電気受容。
電気受容(electroreception)とは、水中を伝わる弱い電場を感覚として受け取る働き。生きた動物の筋肉が動くときにもれ出る電気などが手がかりになる。空気は電気をほとんど通さないため、この感覚は基本的に水の中で成り立つ。
受動型と能動型
大きく2つに分かれます。受動型は、自分では電気を出さず、まわりで生じた電場をただ受け取ります。サメ・エイの一部や、古い系統の魚、そしてカモノハシがこちら側です。能動型は、体内の電気器官で自ら弱い電場をつくり、その乱れ方から周囲の物の位置や性質を読みます。アフリカのモルミルス類や南米のギュムノトゥス類が知られ、仲間どうしの通信にも使われます。
哺乳類では例が少ない
1986年にNatureに報告された研究で、カモノハシのくちばしが約50µV/cmの電場に反応することが行動と脳の誘発電位の両面から示されました。それまで「弱い電気を感じる能力は魚と一部の両生類のもの」と整理されていたため、哺乳類での最初の報告になりました。近縁のハリモグラにも受容器はありますが、報告されている数はカモノハシよりはるかに少ないとされます。
魚とは部品の作りが違う
魚の電気受容器には専用の感覚細胞がありますが、カモノハシでは神経の終末が皮膚の腺の変形した部分に直接収まっており、感覚細胞をともないません。同じ働きに向かって、別の部品が用意されたと読めます。系統の離れた動物が似た課題に似たかたちで答える収斂進化の例として扱われることがあります。
補足:電場の強さは1センチあたりの電位差(V/cm)で表すのが慣例。50µV/cmは1ボルトの2万分の1にあたる。関連語として磁気受容、アイマー器官。