宇宙 — 2026.09.15 TUE NO.061 / TSUGINOTE SCIENCE

金星が、今年いちばん明るく輝きます。9月19日ごろ、日没から30分後、西の低空に

厚い雲に包まれた金星を思わせる、淡い黄褐色の抽象イラスト。実際の観測画像ではありません

要点:国立天文台によると、金星は2026年9月19日ごろに一年でいちばん明るい「最大光度」(マイナス4.8等)を迎えます。東京の日の入り(17時43分)から30分ほど経った西の低空を見れば、肉眼でもひときわ強く光る金星が見つかります。望遠鏡があれば、三日月のように欠けた姿も観察できます。丸く満ちている時期より、欠けている今のほうが明るいという逆説つきです。

日が沈んで間もない空に、瞬きひとつしない強い光の点が浮かびます。その正体は金星です。国立天文台は、この金星が2026年9月19日ごろに一年でいちばん明るい「最大光度」、マイナス4.8等を迎えると発表しました。

マイナス4.8等がどれほどの明るさか、数字を置き換えておきます。全天でいちばん明るい恒星シリウスは マイナス1.46等です。等級は5等違うと明るさが100倍になる対数の目盛りなので、その差から計算すると、最大光度の金星はシリウスのおよそ22倍明るいことになります(この換算は本紙による)。澄んだ空なら、位置さえ分かれば白昼の青空の中にも肉眼で見つけられるほどだと国立天文台は述べています。


いつ、どこを見ればいいか

日付は2026年9月19日ごろ。時刻は、東京の日の入り17時43分から30分ほど経ったころが目安です。方角は西、高さは低め――地平線に近い低空です。国立天文台が公開している星空の画像も、日の入り30分後の西空を切り取ったものでした。

道具は要りません。肉眼で十分見つかります。双眼鏡や望遠鏡があれば、丸くなく三日月のように細く欠けた金星の姿を確かめられます。ただし金星がまだ空の低い位置にあり、日没直後の残照とも重なるため、西の地平線近くまで開けた、高い建物や山のない場所を選ぶと見つけやすくなります。雲や靄がかかっていると、低空の金星はかき消されてしまいます。日の入り時刻は地域で前後しますが、「日の入りから30分後、西の低空」という目安は全国どこでも変わりません。

最大光度は9月19日という1点だけの現象ではありません。金星の見かけの明るさは前後の数日でゆるやかにしか変わらないため、19日をはさむ前後の数日間も、ほぼ同じ強さで輝いて見えます。19日の夜が曇っていても、慌てる必要はありません。

丸くないのに、いちばん明るい

ふつうなら、満月のように丸く光っている面が広いほど明るいはずだと考えたくなります。ところが金星では、その直感が外れます。

金星は地球より内側の軌道を回っているため、月と同じように満ち欠けをします。地球から見て金星が太陽の向こう側にある「外合」のころ、金星はほぼ丸く満ちて見えますが、地球からの距離が遠いぶん、見かけの大きさ(視直径)は小さくなります。このころの明るさはマイナス3.9等ほどです。

金星が外合を過ぎて地球に近づいてくると、太陽の光が当たっていない側が地球を向くようになり、欠けて見え始めます。しかし同時に距離が縮まるため、視直径はどんどん大きくなっていきます。最大光度のころ、太陽に照らされて見えているのは金星の表面のおよそ4分の1だけですが、視直径は外合のころに比べて4倍近くも大きく見えます。欠けて小さくなった分より、近づいて大きくなった分のほうが効いて、差し引きでいちばん明るくなる――というのが国立天文台の説明です。マイナス3.9等とマイナス4.8等の差から計算すると、最大光度の金星は外合のころのおよそ2.3倍明るいことになります(この換算も本紙による)。

金星と地球の軌道上の位置関係を示した模式図 太陽を中心に、地球の軌道と金星の軌道を描き、外合・東方最大離角・最大光度・内合の4つの位置をおおよその順番で示した図 太陽 外合(9/19の1年半ほど前) 丸いが遠く、マイナス3.9等 東方最大離角 8月15日・半月形 最大光度 9/19ごろ・欠けているが近く、マイナス4.8等 内合 10月24日・見えなくなる
金星の見かけの位置と明るさの変化を示した模式図(実際の軌道の縮尺どおりではありません)。外合のころは丸いが遠く暗め、最大光度のころは欠けているが近いぶん明るくなります。日付と等級は国立天文台の発表にもとづきます。

金星ごよみ ― 次はいつ

金星の満ち欠けと明るさの変化は、およそ583.9日(1年7か月ほど)の周期で繰り返されます。国立天文台が示す当面の予定は次のとおりです。

時期現象
2026年8月15日東方最大離角(半月のような形)
2026年9月19日最大光度(マイナス4.8等・今回)
2026年10月24日内合(見えなくなる)
2026年11月30日最大光度(明けの明星として)
2027年1月4日西方最大離角
2027年8月12日外合

10月24日の内合を境に、金星は太陽の向こう側の見えない位置を通り抜け、今度は明け方の東の空に「明けの明星」として現れます。そのまま583.9日をひとつの区切りとして満ち欠けを繰り返すので、単純に足し算すると、次に今回と同じように夕方の西の空でこの明るさに出会えるのは、およそ2028年4月下旬ごろになる計算です(この概算も本紙による単純な日数計算で、実際の暦とは数日ずれる可能性があります)。しばらく先の話ですが、望みを託しておくにはちょうどいい遠さです。

まだ言い切れないこと

正直に書いておきます。最大光度の日付は、国立天文台は9月19日としていますが、海外の天文情報サイトのなかには1日ずれた9月18日を挙げているところもあります。等級の変化はごくゆるやかなので、どちらの日に見ても肉眼で違いが分かるほどの差はないはずですが、「ちょうどこの日」という厳密さまでは保証できません。また、シリウスとの明るさの比較や、外合との明るさの比較、次に同じ現象が起きる時期の計算は、いずれも国立天文台が発表した等級や周期の数字をもとに本紙が計算した参考値であり、公式に示された値そのものではありません。

雲に阻まれた夜も、翌日や翌々日にもう一度チャンスがあります。西の低空が開けた場所を見つけておけば、9月19日を逃しても、その前後数日はほとんど変わらない明るさで金星が待っています。

出典:国立天文台(NAOJ)「月が金星に接近、金星が最大光度(2026年9月)」(2026年9月・ほしぞら情報2026年9月)https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/09-topics02.html / 東京の日の入り時刻:国立天文台暦計算室「日の出入り@東京 令和8年(2026)09月」https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2026/s1309.html / ※シリウスとの明るさ比較(約22倍)、外合との明るさ比較(約2.3倍)、次回の夕方最大光度の概算時期(2028年4月下旬ごろ)は、国立天文台発表の等級・周期の数値をもとに本紙が計算した参考値です。査読を経たものではありません。シリウスの実視等級(マイナス1.46等)は天文学で広く用いられる値を用いました。
EDITOR'S NOTE — ノゾム:欠けているほうが明るい、という金星の性分を書きながら、望遠鏡を持たない私は結局、三日月形の金星をこの目で見たことがありません。それでも、地平線すれすれの低いところで、他のどんな星よりも強く光っている姿は、肉眼だけでも十分に望みを託せる眺めだと思います。583.9日先の約束を書き終えて、次に同じ高さと明るさでここに戻ってくる金星を、また同じ場所から見上げたくなりました。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.15
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