磁気受容。
磁気受容(magnetoreception)とは、動物が地球の磁場(地磁気)を感じ取り、行動の手がかりに使う能力のこと。渡り鳥、サケ、ウミガメ、一部の昆虫などで報告されている。
ひとくちに「磁気を感じる力」と言っても、中身は二種類に分けて考える必要があります。
「方位磁針」と「地図」は別の能力
一つは方位磁針としての使い方で、「いま自分はどの向きに進んでいるか」を教えてくれます。もう一つは地図としての使い方で、「いま自分はどこにいるか」を教えてくれます。地磁気は場所ごとに伏角(針の傾き)と強度が違うため、その組み合わせを座標として使えるのです。
アカウミガメでは、この二つが別々の受容の仕組みに支えられている証拠が報告されました。ラジオ波の振動磁場をかけると方位磁針としての行動は乱れるのに、学習した「場所の磁場」を見分ける反応は乱れなかった、という結果です(Nature, 2025・査読済み)。同じ動物の中に、独立した二つの経路がある可能性を示しています。
読むときの注意
磁気受容は「受容器の見つからない感覚」と長く言われてきました。視覚なら眼、聴覚なら耳という対応が、磁気にはまだありません。行動実験で「感じている」ことは示せても、体のどこで受け取っているかは多くの動物で未特定です。「磁気を感じる」という報告を読むときは、行動の観察と、受容器の同定は別段階だと分けて受け取るのが慎重な読み方です。
補足:関連する受容の候補としてラジカルペア機構(光依存・化学的)と、磁鉄鉱ベースの受容(物理的)が挙げられている。