用語辞典 — ツギノテ。SCIENCEGLOSSARY

ラジカルペア機構

ラジカルペア機構(radical-pair mechanism)とは、光を受けた分子の中で生じる電子の対(ラジカルペア)の状態が、磁場の向きによってわずかに変わることを利用した、磁気受容の仕組みの候補。

「磁場を見る」型の受容と説明されることがあります。光がないと成り立たないため、目やその周辺の光受容分子(クリプトクロムなど)が舞台と考えられており、渡り鳥の方位感覚の説明として有力視されてきました。

切り分けに使える性質

この機構には、実験で扱いやすい弱点があります。特定の周波数帯(ラジオ波)の振動磁場をかけると、ラジカルペアの状態が撹乱されてはたらきが乱れると予測されるのです。そこで「ラジオ波をかけたら行動が崩れるか」を見ることで、ラジカルペア機構に依っているかどうかを判定できます

アカウミガメでは、方位磁針としての向き取りはラジオ波で乱れた一方、学習した場所の磁場を見分ける反応は乱れなかったと報告されました(Nature, 2025・査読済み)。後者は、磁鉄鉱が磁場の中で動く力を感じ取る「物理的」な経路が担っている可能性が示されています。

読むときの注意

ラジオ波で乱れたかどうかは間接的な証拠です。分子レベルでラジカルペアが磁気に応答することは試験管内で確かめられていますが、それが動物の体内で実際に方位感覚を生んでいる回路まで、まだ完全にはつながっていません。「有力な候補」であって「確定した仕組み」ではない、という距離感で読むのが妥当です。

補足:ラジカルペア機構は光に依存するため、暗所での磁気感覚は別の仕組み(磁鉄鉱ベースなど)で説明される場合がある。